pas de calaisの秋冬シーズンの “顔” でもあるニットを生産している、ニットファクトリーと紡ぐストーリー。
5 年ほど前から、pas de calaisのニットはすべて国内製。 クリエイティビティを飛躍させるための選択だが、理想とするニットを完成されるための道のりは、簡単なものではなかった。
現在は徳島をはじめ新潟、山形のファクトリーに依頼し ている。東京のアトリエから、各工場に何度も何度も、足 を運んだ。pas de calaisは、ニットのデザインや縫製の前 段階に最も時間をかける。特に編地は、ニットの肌ざわり を左右する。pas de calaisならではの独特の風合い、やわ らかさまでたどり着くまでに、数十回、数百回と試作を重 ねた。いわゆる幾何学的な美しさとは異なる味わい深さを 表現するために大切にしていたのが、職人とのコミュニケーション。「pas de calais が叶えたいニットとは」を細部まで伝 え、手に取り、素材の力を最大限引き出すために追い求めた。
なかでも徳島ニットファクトリーは国内有数のスクールセーターを生産してきた。いわゆる目の整った美しさや耐久性の良さを追求してきたため、当初は規格外のこだわりに職人たちも戸惑いを見せていた。しかし、やりとりを重ねるにつれて信頼関係ができたのだろう。さまざまな提案を積極的にしてくれるまでになった。 約一年もの長い道のりを経て、納得のいく編地が完成。 pas de calais 流のニットが出来上がった。今日までpas de calaisのチームとして支えてくれているニットファクトリー。非常に繊細な工程を職人の手によってニットが作りこまれていく。やがて誰かの手に渡り、心地よく纏われる、その時を想像しながら。
pas de calais が届けたいニットとは、柔らかくやさしい肌ざわりで、大量生産では実現しないふっくらとした風合い、着古したような味わい深さ。 上質な素材で高級感がありながらゆるりとしたラフさは、機械ではなく一つひとつ職人の手によって紡がれたから。
コスト面や生産のスピードも、海外生産より国内生産のほうが圧倒的に手間はかかる。しかし、あくまでpas de calaisがこだわるのは日本製。日本ならではの繊細さで絶妙なニュアンスを表現でき、より理想に近い一品を届けることができる。安定することは、望まない。むしろ、一枚一枚それぞれにある風合いを、楽しんでもらいたい。
普遍的で、生涯着続けたいと思えるニットを。
それはベーシックとも長持ちするとも異なる、唯一無二の 美しさ。一度袖を通せば、この心地よさとともに過ごしたく なるはず。 来年もその先も着る価値があるニットを届けるために、 pas de calais の探究は、これからも続く。